展示情報
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開館10周年記念企画展「没後50年 川端康成展-愛を乞う魂」
「伊豆の踊子」「雪国」などの代表作で知られる川端康成(1899 ~ 1972)。アジアで2人目のノーベル文学賞受賞者として世界にその名を謳われ、没後50年となる現在も数多くの著書が読まれ続けている、日本を代表する文豪のひとりです。
日本の美を描いた作家という印象が強い川端ですが、初期のころは〈新感覚派〉の一員として、先鋭的な作品で注目されています。また、長い作家生活のなかで常に新しい芸術表現を試み、幅広いジャンルの作品を手がけました。戦後は、一般的な道徳を超えたところにある独自の美=〈魔界〉を追求し続け、変幻自在な筆でつむいだその物語は、驚くべき多様性と多面性に満ち、頁をめくるたびに読者を新たな世界へと誘います。
川端は、14歳の時には唯一の肉親であった祖父とも死別し、孤児となりました。人の愛情をありがたいと感じながらも、癒されることのないさびしさは、孤独を乗り越えようと人とのつながりを追い求める、各作品の登場人物にも映しだされています。
本展では、作品に底流する〈人間・川端〉のさびしさとやさしさ、人間の根源を見つめ、紡いだ、〈川端文学〉のさまざまな愛の世界をご紹介します。
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開館10周年記念企画展「没後50年 芥川賞作家 柏原兵三 展」
物が豊富過ぎる程ある現代に、外套に不自由した時代の話は、もしかすると童話(メルヒエン)のような味わいを持つのではないか
(「外套」より)
陸軍中将であった母方の祖父を描いた「徳山道助の帰郷」で第58回芥川賞を受賞し、「長い道」で東京を離れ、父の故郷の富山県入善町に疎開した少年期の体験を描いた柏原兵三(かしわばら・ひょうぞう 1933-1972)。ドイツ文学を学び、留学し、翻訳を手がけたことによって培われたその筆致は、自らの体験と親族の人生に取材し、戦争を経て、人びとが失ったものと日々の暮らしを丹念に描き、日常にひそむひずみや奇妙さに目を凝らし、ユーモアに満ちた穏やかで強い生命力を感じさせます。その作品は、38歳の若さで世を去って没後50年を経た現在においても、不安の時代にあってどのように生きていけばよいのかを考える道を開いてくれます。
今回の企画展では、このたび新たに寄贈を受けた約5,600点の資料から、芥川賞作家柏原兵三の全貌を紹介します。自筆原稿、書簡、日記、写真、画家を目指そうと考えたこともあるという絵画など、初公開資料を含め、柏原兵三が生きた時代とその作品を紹介します。
【リンク】企画展関連イベント

高志の国文学館開館10周年記念企画展「荒井良二のPICTURE BOOK<絵・本>」
世界で注目を集める絵本作家のひとり、荒井良二(1956~)。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件から生まれた『はっぴいさん』、東日本大震災をきっかけに描かれた『あさになったのでまどをあけますよ』など、時代をみつめた絵本作品は大きな反響をよびました。
日本絵本賞大賞やボローニャ国際児童図書展特別賞など国内外で数々の賞を受賞し、2005年には、児童文学や青少年向けの文学作品にあたえられる、スウェーデンの世界的な文学賞であるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人ではじめて受賞しました。
豊かな色彩と繰り返す言葉のリズムが特徴的な荒井の絵本は、子どものみならず、かつて子どもであった大人を含めて幅広い世代に人気を誇っています。本質的なものをそっと差し出すような荒井の作品は、誰の心にも響く深い感動を届けてくれます。
本展は、高志の国文学館開館10周年を記念した、はじめての絵本展です。初期から最近までの代表作を通して、何気ない日常の中にこそ生きる喜びや希望があることに気づかせてくれる、荒井の絵本の世界をお楽しみいただきます。

個性きらめく富山の女性作家たち 展
近代から現代にいたるまで、富山ではさまざまな個性を持った女性作家たちがユニークな女性文学史を形成してきました。本展は会期を第1期・第2期に分け、富山の女性作家たちが作りあげてきた豊かな文学世界を紹介します。
第1期「時代を切り開く」では、女性の社会進出が十分に進んでいなかった明治・大正・昭和初期の時代から、富山の女性文学発展の礎を築く先駆的な活躍をした作家たち(小寺菊子、富本一枝、澤田はぎ女、方等みゆき)をとりあげました。
第2期「多彩な活動の展開」では、昭和・平成を中心に幅広いジャンルの作品を発表し、富山の文学界を牽引してきた女性作家たち(野村玉枝、遠藤和子、辺見じゅん、木崎さと子)をとりあげます。
回廊展示コーナーでは、「今をはばたく富山の女性作家たち」として、恩田陸、高山羽根子、山内マリコ、小谷真理、坂東眞理子、室井滋、村木美涼、大垣さなゑ、杉本りえ、廣川まさき、栗林佐知、やまとけいこ、霜月りつの各氏を、作家自身から寄せられたメッセージを添えて紹介します。

太宰 治 創作の舞台裏 展
太宰治の作品は、独特のささやくような語りの文体で若い読者を捉えています。『走れメロス』『斜陽』『お伽草紙』『富嶽百景』『トカトントン』が教科書に採用されるなど、太宰治は若い世代に広く知られる、最も人気のある作家のひとりです。
本展では、近年発見されたノート、原稿、草稿、写真など「貴重資料」に焦点を絞り、「語りの文体」と称される太宰文学の魅力がどのように生み出されたのか、その「創作の舞台裏」に迫ります。また、『女生徒』『黄金風景』『満願』などの中期の明るく、家庭的な愛情あふれる作品にもスポットをあて、あらたな太宰作品との出会いをお楽しみいただきます。