文学賞

Literary Award

第1回大伴家持文学賞・高志の国詩歌賞受賞者の決定について

富山県では、万葉集の代表的歌人であり、国守として赴任した越中で数々の秀歌を詠んだ、大伴家持(718~785年)の生誕1300年を記念し、各種の記念事業を実施しています。
その主要事業として、世界のすぐれた詩人を顕彰する「大伴家持文学賞」及び富山県ゆかりのすぐれた若い世代(40歳未満)の詩人を顕彰する「高志の国詩歌賞」を昨年度に創設。選考委員会での審議等を経て、このたび第1回の両賞の受賞者を決定しました。
受賞者は以下のとおりです。

第1回大伴家持文学賞受賞者

マイケル・ロングリー氏  Michael Longley
詩人、イギリス(北アイルランド)出身、78歳
主要著書『日本の天気(The Weather in Japan)』(2000年)

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(プロフィール)
北アイルランドのベルファストで1939年に生まれる。北アイルランド芸術文化振興会に20年間勤務し、地方における文学と伝統音楽の振興に携わる。11冊の詩集を出版しており、Collected Poemsは2006年に発表された。最新の詩集であるAngel Hillは、Sidelines: Selected Prose 1962-2015と同じく、2017年に出された。詩集The Stairwell (2014年)は、グリフィン・インターナショナル賞を受賞。2001年にクイーンズ金メダルを授与され、2003年にはウィルフレッド・オーエン賞を受賞。さらに、ウィットブレッド賞、ホーソーンデン賞、T.S.エリオット賞を受賞している。2015年に、ベルファスト名誉市民に選ばれ、2010年に大英帝国勲章司令官を与えられた。2007年から2010年までアイルランド詩学会会長を務めた。2017年に国際ペンクラブ・ピンター賞を受賞。1991年に日本を訪れ、日本の芸術文化に感銘を受けた経験が、詩作に影響を与え続けている。代表作の一つに詩集『日本の天気』がある。
(選考理由)
数多くの国際的な文学賞を受賞した現代アイルランド文学における代表的詩人であり、日本の短詩型文学からインスパイアされた英詩のモダニズムとの結合によって独自の境地を開いている。さらに美しい言葉が抒情的、音楽的であると同時に、冷静な観察眼とエモーションとをもって、生きることの孤独や連帯といった普遍的なテーマをうたう詩人として、世界に周知されている。選考委員会では、ロングリー氏の業績を高く評価し、「選考時点で世界最高の詩人を顕彰する」ことを目標とする本賞の受賞者として決定した。彼の詩の、日本語における紹介は必ずしも多いといえないこの状況に向けても本賞の決定が担う意義は大きい。

第1回高志の国詩歌賞受賞者

山田 航(やまだ わたる)氏
歌人、北海道(札幌市)出身、34歳
受賞対象作品『水に沈む羊』(2016年)

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(プロフィール)
1983年生まれ。北海道札幌市東区出身・在住。曽祖父が富山県小矢部市出身。 立命館大学法学部卒業。北海学園大学大学院文学研究科修士課程修了。短歌誌「かばん」「pool」所属。 2009年、「夏の曲馬団」で第55回角川短歌賞、「樹木を詠むという思想」で第27回現代短歌評論賞を受賞。2012年、第1歌集『さよならバグ・チルドレン』を刊行し、同年、同歌集で第27回北海道新聞短歌賞、翌2013年、第57回現代歌人協会賞を受賞。2014年、第42回札幌市文化奨励賞を受賞。2016年、第2歌集『水に沈む羊』を刊行。 このほか著書に、アンソロジー『桜前線開架宣言 Born after 1970現代短歌日本代表』(2015年)、エッセイ『ことばおてだまジャグリング』(2016年)などがある。 2017年より『野性時代』(角川書店)「野性歌壇」選者。
(選考理由)
対象作品『水に沈む羊』は、構成力、虚構力が非常に高く、一気に読ませる力があり、一冊の歌集としての重厚感がある。ニュータウン、いじめ、不妊などの今日的なキーワードに向き合い、現代詩歌の一つの達成を示している。この受賞が、自らのルーツを踏まえた「移民文学としての北海道文学」を重要なテーマとする氏にとって、今後のさらなる活躍の後押しとなると考えられる。また、現代短歌の評論やエッセイやアンソロジーなどの著作も発表するなど幅広く活動している。今後の一層の活躍を期待し、本賞を贈呈することが相応しい。