展示情報

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開催中の企画展

開館10周年記念企画展「没後50年 芥川賞作家 柏原兵三 展」

高志の国文学館では、令和4年9月24日(土)から、開館10周年記念企画展「没後50年 芥川賞作家 柏原兵三 展」を開催中。

物が豊富過ぎる程ある現代に、外套に不自由した時代の話は、もしかすると童話(メルヒエン)のような味わいを持つのではないか



(「外套」より)



陸軍中将であった母方の祖父を描いた「徳山道助の帰郷」で第58回芥川賞を受賞し、「長い道」で東京を離れ、父の故郷の富山県入善町に疎開した少年期の体験を描いた柏原兵三(かしわばら・ひょうぞう 1933-1972)。ドイツ文学を学び、留学し、翻訳を手がけたことによって培われたその筆致は、自らの体験と親族の人生に取材し、戦争を経て、人びとが失ったものと日々の暮らしを丹念に描き、日常にひそむひずみや奇妙さに目を凝らし、ユーモアに満ちた穏やかで強い生命力を感じさせます。その作品は、38歳の若さで世を去って没後50年を経た現在においても、不安の時代にあってどのように生きていけばよいのかを考える道を開いてくれます。


今回の企画展では、このたび新たに寄贈を受けた約5,600点の資料から、芥川賞作家柏原兵三の全貌を紹介します。自筆原稿、書簡、日記、写真、画家を目指そうと考えたこともあるという絵画など、初公開資料を含め、柏原兵三が生きた時代とその作品を紹介します。


【リンク】企画展関連イベント







開催中の常設展

辺見じゅん特集―『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』映画化記念



ぼくはね、人間が生きるということはどういうことなのか、



シベリアにきてようやく分かってきた気がするんだ。



―「第五章 シベリアの「海鳴り」」『文春文庫 収容所から来た遺書』より



 



富山県ゆかりの作家・辺見じゅん(生没年:19392011)。



辺見の代表作『収容所から来た遺書』は、第二次大戦後、ソ連軍によってシベリアに連行され、極寒の強制収容所(ラーゲリ)に抑留されるも、帰国の希望を捨てず仲間を励ましつづけ、自らの信念を最後までつらぬいた、ひとりの人物の実話を描いたノンフィクション作品です。



令和4年12月には、本作品を原作とした映画「ラーゲリより愛を込めて」が公開されます。



本展では、映画化を記念して、辺見じゅんの『収容所から来た遺書』の自筆原稿や構想メモ、作品執筆のための取材資料などを紹介します。






●展示資料



展示ケース① ノンフィクション作品



・辺見じゅん著作『収容所から来た遺書』『昭和の遺書』『ダモイ 遥かに』



・第21回大宅壮一ノンフィクション賞贈呈式案内状(日本文学振興会)



 



展示ケース② 自筆原稿・構想メモ



 ・辺見じゅん自筆『収容所から来た遺書』に関する構想メモ



 ・『収容所から来た遺書』草稿



 



 展示ケース③ 取材資料



 ・辺見じゅん自筆ノート「収容所から来た遺書ノート」



 ・インタビューの文字起こし原稿



 



 展示ケース④ メディア化



 ・朗読劇パンフレット、公演チラシ



 ・コミカライズ作品  など 


 ○映画情報


 タイトル:「ラーゲリより愛を込めて」


 監  督:瀬々敬久


 脚  本:林民夫


 出  演:二宮和也、北川景子など


 配  給:東宝





開催中の常設展

富山を描いた文学作品-富山文学地図(4)

令和4年6月24日(金)~令和5年6月下旬


富山では、天平18年(746年)に越中守となった大伴家持以来、千年以上営々と文学作品が紡ぎだされてきました。



今回の展示では、富山県ゆかりの文学者がどのように富山を描いたのかを散文作品を通して紹介します。



富山の美しい山河を描いた作品には、大井冷光の童話「雲の子供」や、辺見じゅんの「花子のくにの歳時記」、宮本輝「螢川」などがあります。



富山の風土を背景とした人間模様を描いた作品には、三島霜川「水郷」、小寺菊子「河原の対面」、須山ユキヱ「延段」、堀田善衞「鶴のいた庭」、柏原兵三「長い道」、瀧口修造「三夢三話」、木崎さと子「青桐」、久世光彦「時を呼ぶ声」などがあります。富山での原体験を胸に、中央の文壇で活躍した作家の作品には、保守的な気質への反発と進取性、変革への強い意志が感じられます。



また、地元の富山に居を定め、地元の歴史と文化に目を向けた作品には、マルキシズムと親鸞の思想を背景に主人公の精神性に迫る岩倉政治の「無告の記」、教員を経て作家となり郷土の物語を次代につなぐ遠藤和子の「オロロのいる村」などがあります。
開催中の常設展

ヘルン文庫コーナー「ラフカディオ・ハーンの再話作品(日本の怪談)」

開催期間:令和4年8月3日(水)~12月26日(月)

 「耳なし芳一」「むじな」「ろくろ首」「雪女」など、『怪談』に収められたこれらの物語は、一般的にハーンの代表作としてよく知られています。これらは、日本の昔話や伝説などをもとに、ハーンが独自の表現で書き直した文学作品であり、「再話」と呼ばれるものです。



 明治23年(1890)に来日して以降、日本の昔話や伝説に関心を抱くようになったハーンは、来日後第1作『知られぬ日本の面影』(1894年)において、その土地の伝承を語りの形で作品中に取り込み、『霊の日本』(1899年)からは、4篇の独立した再話作品を書きました。翌年の『影』からは、再話作品6篇を著作の柱として巻頭に掲げるようになり、続く『日本雑録』(1901年)には6篇、『骨董』(1902年)には9篇、『怪談』(1904年)には最多の14篇の再話作品を収めるに至りました。なかでも、晩年の『骨董』『怪談』収録の再話物語は、作品としての完成度が高く評価されています。


 妻セツの回想記『思ひ出の記』には「幽霊滝の伝説」(『骨董』所収)の登場人物のセリフをセツに何度も繰り返させ、その言い方や声の調子はどうだったか、などと本にないことまで2人で相談したことが語られています。登場人物に人間的な肉付けが与えられ、物語にリアリティが生れていく過程がうかがえます。





〈ヘルン文庫について〉


 高志の国文学館は、富山県の「ふるさと文学の総合窓口」の役割を果たす一環として、富山大学に伝わる「ヘルン文庫」を紹介するコーナーを、常設展示室に設けています。


 ヘルン文庫は、明治期の日本を海外に紹介した、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの旧蔵書からなる大変意義深い文庫です。


 これまでに常設展をご覧いただいた方も、この機会にぜひお越しください。





次回の企画展

【前売券発売中】開館10周年記念企画展「没後50年 川端康成展-愛を乞う魂」

高志の国文学館では、令和4年12月24日(土)から、開館10周年記念企画展「没後50年 川端康成展―愛を乞う魂」を開催します。

「伊豆の踊子」「雪国」などの代表作で知られる川端康成(1899 1972)。アジアで2人目のノーベル文学賞受賞者として世界にその名を謳われ、没後50年となる現在も数多くの著書が読まれ続けている、日本を代表する文豪のひとりです。



 日本の美を描いた作家という印象が強い川端ですが、初期のころは〈新感覚派〉の一員として、先鋭的な作品で注目されています。また、長い作家生活のなかで常に新しい芸術表現を試み、幅広いジャンルの作品を手がけました。戦後は、一般的な道徳を超えたところにある独自の美=〈魔界〉を追求し続け、変幻自在な筆でつむいだその物語は、驚くべき多様性と多面性に満ち、頁をめくるたびに読者を新たな世界へと誘います。



 川端は、14歳の時には唯一の肉親であった祖父とも死別し、孤児となりました。人の愛情をありがたいと感じながらも、癒されることのないさびしさは、孤独を乗り越えようと人とのつながりを追い求める、各作品の登場人物にも映しだされています。



本展では、作品に底流する〈人間・川端〉のさびしさとやさしさ、人間の根源を見つめ、紡いだ、〈川端文学〉のさまざまな愛の世界をご紹介します。